第二回 月経不順
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Aさんの診察室 初めて月経がきて以来 規則正しくちゃんと来たためしがないの。2ヶ月や3ヶ月無いことなんてざら。来たなって思っても、すごく少なかったりするの。この間の月経は、なんだかだらだら続いて、2週間以上あって心配になってきました。 2ヶ月や3ヶ月かかっても、排卵さえしていたら、まずは安心なのですけど…。 排卵が無かったら問題ですね。こんなに長い周期でも、20代から30代のひとは60%~80%は排卵があるとのデーターがあります。でも、すごく少ないときや長く続くときは、排卵のない周期かもしれません。これは、月経ではなく、不正出血です。まず 基礎体温を測ってみてください。2~3ヶ月様子を見てみませんか? 3ヶ月後 基礎体温をつけてきたのですが ついつい忘れたり旅行でつけられなかったりで、完璧ではありません。先生に怒られちゃうかも知れませんが、見てください。 大丈夫ですよ。大まかな形がわかったらよいのです。例えば、起きる時間が遅かったり、寝不だったり、お酒を飲んで酔って寝たら、体温が上がったりするのです。排卵のある周期のほうが多いようですね。時々排卵がないくらいなら、このまま様子を見ていてもよいと思います。 でも、途中でちょこっと茶色いおりものが何日間も出たり、ときには血の色だったりするのですが…。 排卵までの期間が長すぎると、内膜が不安定になって出血してしまうのです。それでも、排卵が起こり、ちゃんと月経が来たら問題ないのですが、そのまま無排卵なら不正出血が何度も起こるのです。 そんなときは どうしたらよいのですか?不安です…。 そんな時は、来院してくださいね。ちょっとだけホルモン剤を何でもらって、不正出血を止めて新しい周期を作って、次の月経がきちんと来るか確認させてもらいます。もちろん、排卵のない周期を繰り返しているようなら、検査をして本格的なホルモン治療を始めなくてはなりません。 排卵があるとわかって、ほっとしました。でも、いつ出血があるか分からない状態なんて不便です。 OC(低用量ピル)で、月経周期は28日にすることができますよ。避妊や月経痛を軽くする作用もあるので、安心できるのではないかしら。 少し安心しました。おかしいなっと思ったら基礎体温ですね。OCも便利かな。OCについて、もっと知りたいです! これから30年月経とつきあっていくわけですから、一緒に勉強していきましょうね。 |
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Bさんの診察室 実は、ずっと月経がないのです。出血したのははるか昔、いつだったか忘れてしまいました。『めんどうくさくなくって、好都合?』なんて思っていたのですが、彼とのゴールインも見えてきて、何とかしたほうがよいかな…と思って。 女性は、月経があるのが当たり前! もっと早くおかしいなって思わないといけませんよ。月経がなくなった時、特別な生活の変化や体調の変化がありましたか?大きなストレスを感じるような事がありましたか? 就職をしてしばらくたったころだったと思います。職場の人間関係がしっくりしなくて、胃の調子までおかしくなりました。その上、ものすごく忙しくて家に帰るのも遅く、夕食抜きで寝てしまったり…。体重も激減。その上、当時の彼氏とも別れてしまい、散々でした。いまも職場の人間関係は改善していないかも…。 月経周期は、大きな環境や体調の変化に影響を受けます。卵巣は勝手に排卵したりホルモンを出しているのではないのです。脳の一部分で卵巣の働きをコントロールしているのです。私たちは、3ヶ月月経が来なければ無月経と判断します。 無月経には大まかに2通りのものがあります。 ひとつはA:卵巣自身が力を失った無月経。すなわち閉経と同じ状態です。 もうひとつは、B:卵巣は力を持っているのにもかかわらず、脳からの指令がうまく伝わっていない状態。どちらであるのかは、血液検査やこれからの治療の進み方でわかります。 結婚したら、赤ちゃんが欲しいんです。すぐに治りますか? 今はまだ何とも言えませんね。無月経の期間の長さにもよりますが、数年にわたる治療が必要なこともあります。無月経Aの場合は、早発閉経といって、卵巣の力を復活させるのは、ほぼ不可能と言われています。まれに不妊治療で排卵が起こることもありますが、正直言って難しいですね。 Bの場合、月経が来なくなった原因をひとつずつ解消していくことが必要です。体重は減ったままでしょうか? そうですね。スリムになって、喜んでいたのですが…。できればスリムなままでいたいのですが、ダメですか? 極端に体重が減っているのなら、ノーマルな範囲にまで戻す必要がありますね。治療のまず第一歩と考えてください。そうしながら、ホルモン療法を受けていただきます。まずは、月経が来ていたときの体の中のホルモンの環境と同じ状態を、薬を飲みながら作っていきます。そうすることで、体が忘れかけている正常な環境を思い出させるのです。繰り返しの治療のなかで、排卵が復活していくかを確かめていきます。さあ 血液検査をしましょう。 数日後 再びBさんの診察室 血液検査はどうでしたか? 早発閉経ではありません。エストロゲンという基本の女性ホルモンはしっかりだせているようです。ホルモン療法を定期的にしていきましょう。体が本来の環境を自分で作れるように、ホルモンの薬を飲むことで正常な状態を体に思い出させるわけです。クリニックには、1月に一回程度通ってくださいね。 もし、エストロゲンもなかったり、早発閉経だった場合、治療は違うのですか? 治療に使うホルモンの種類が違います。それに、エストロゲンが出ていないと、骨の密度が減ってしまって、かすかすになってしまうことがあるのです。骨粗鬆症として治療しなくてはいけないか調べる必要があります。 ちゃんと治療して、赤ちゃんを産めるようになりたいと思います! |
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Cさんの診察室 1年前から赤ちゃんが欲しいと思って頑張ってるんですけど…。もともと月経不順で、以前には半年くらい無月経だった時期もあり、今も月経の周期はバラバラ。きちんと、1ヶ月に一回来ることもあるのですけれど…。 基礎体温はつけていらっしゃいますか? はい。1年前からつけています。でも、見本とは違うようで…。 そうですね。体温は一定で、低温相高温相の区別がほとんど無く、無排卵の周期を繰り返しているようですね。超音波の検査と血液検査をしましょう。 検査後 再びCさんの診察室 超音波検査で見えた卵巣の形と、血液検査の結果から多嚢胞性卵巣症候群(PCO)と診断しました。排卵障害があり、血液中の男性ホルモンが高く、肥満やひげ、にきびという症状がでる人もいます。体質的なもので、妊娠する為には排卵誘発剤などの治療が必要です。 自然に妊娠することは無理ですか? 時には排卵する周期がある人もいますが、すぐに妊娠をおのぞみなら、排卵誘発の不妊治療を受けたほうが良いと思います。ただし、排卵誘発も卵巣が過剰に反応しやすく慎重にする必要があります。 例えば、赤ちゃんはもう少しあとでと考えて治療すれば、自然に排卵するようになるのでしょうか? 排卵する周期もまれにあるかもしれませんが、残念ながら体質なので、完全に自然排卵するようになることは難しいです。妊娠を望んでなければ、定期的にホルモン治療をして月経のような出血をおこすか、もしくはOC(低用量ピル)の使用をお勧めします。 PCO(多嚢胞性卵巣)という体質は、月経不順以外にも体に異変がおこるのでしょうか? 男性ホルモンの作用で、太ったり、毛深くなったり、にきびが出やすかったりする人もいます。ただ、黄色人種ではその傾向は白人に比べ少ないようです。白人では、長い男性のようなひげが生える人もいます。将来、血液中にインシュリンというホルモンが増えて、糖尿病を発症したりする可能性があります。また、肥満によってメタボリックシンドロームに陥る人が多いのも事実です。ですから、運動や食事といった日常生活にも気をつけていただきたいですね。 だったら、無月経や月経不順はほっておいて、妊娠したいときだけ排卵誘発の診療をうけようかしら。 きちんとした月経というのは、毎月子宮内膜がすっきり排出されますが、PCOの患者さんの月経は無排卵で、子宮内膜のはがれ方が不完全なため、残りができます。そのくりかえしが、将来子宮体癌を招く確立が高いのです。妊娠を望まなくても、定期的にOCをはじめとしたホルモン療法を受けるべきだと思います。 わかりました。排卵誘発剤を使うことについて パートナーと相談してきます。 |
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Dさんの診察室 実は数ヶ月前からおっぱいを絞ると乳首から白い液体が出るのです。お乳でしょうか?妊娠はしていないと思います。乳癌の可能性はありますか? 乳房を触らせてください。赤ちゃんに飲ませるお乳(乳汁)だとおもいますが、念のため悪い細胞が混じってないかは調べますね。この機会に乳癌検診も年に1回受けることにしてくださいね。ところで、月経はちゃんときていますか? なんだか最近月経もみだれ気味。今月は、遅れています。 お乳を出す為のホルモンをプロラクチンと呼びます。このプロラクチンが増えると、月経が不順になったり、妊娠しにくくなったりするのです。血液検査をして、ホルモンの状態を調べてみましょう。 検査後 再びDさんの診察室 予想通りプロラクチンの値は標準以上になっています。極端に高い場には、脳下垂体の腫瘍の可能性もあります。その場合には、脳外科で手術となります。Dさんの場合は、ぷろらくちんを抑える治療をうけていただきます。その前にお伺いしたいことがあります。今現在、続けて飲んでいる薬はありませんか? 実は、気力や食欲がなくて、心療内科にかかっているんです。そこで貰っているお薬を飲んでいます。 今の状態は、その薬の影響の可能性がありますね。心療内科の先生に、お薬の変更をお願いしてみてください。それだけで症状が落ち着いてくると思います。胃薬や精神安定剤にもプロラクチンがたくさん出てしまう作用があるものがあります。 薬の影響では無く、プロラクチンが標準値以上になることもあるのですか? 自然にプロラクチンがたくさん出ることもあります。その場合、プロラクチンを抑える薬をお出しします。通常、数ヶ月で正常に戻ります。 心療内科の先生に相談しに行きます。赤ちゃんも欲しいし、薬もやめる方向で相談して見ます。 |
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Eさんの診察室 Eさんは、ご自身のことではなく17歳のお嬢さんのことで相談にこられたようです。 実は17歳の高校生の娘のことなのです。12歳のときに月経が来て、それなりにきていたのです。時には不順になっていたりしましたが、そんなことは私も経験したので気にしていませんでした。半年ほど前からダイエットをし始め 食生活ががらりとかわってしまったのです。その頃から月経は来ていません。なんだか今までの月経不順とは 違うようで心配になって相談に参りました。 それは心配なことですね。思春期の無月経の44%が体重が減少したことによるものといわれています。クラブ活動が激しく無月経になることがありますが。そうではなさそうですね。 スポーツ系のクラブには入っていません。きれいになりたいからダイエットをし始めたのです。夜はお米を食べないとか油で揚げてあるものは避ける お弁当をものすごく小さくして欲しいとかすごくこだわるのです。ほっておいて良いのでしょうか? 思春期の体重減少性無月経は回復が難しく、今後の娘さんの人生に大きく影響する可能性があります。体重がもとの90%以上に回復しても、すぐに月経がもどってくるわけでなく、戻るまで2年から3年の時間がかかる場合があるのです。体重に対するこだわりがどの程度のものか 直接お話したほうが良いかもしれませんね。月経の大切さをしっかりお話して、ダイエットをやめてくれるくらいのこだわりならよいのですが…。極端にやせているにもかかわらずダイエットを続け、体重にこだわる場合には、神経性食欲不振症または拒食症と呼ばれる心の病です。 体重を元に戻しても月経がもどってこないときにはどんな治療をするのですか? 単なる体重減少による無月経で体重がもどった場合で、それでも月経が元に戻らない場合には、ホルモン療法で本来のからだの環境を思い出してもらいます。ただ、神経性食欲不振症の場合には、絶対に体重を元に戻すことを拒みます。この場合もホルモン療法で月経を起こさせますが、極端にやせている場合には、体力が十分でないためホルモン療法はひかえます。体形や体重に極端にこだわるようになった原因が、心の深い部分が傷ついた経験や、親子・友人関係が深くかかわってくる精神的問題にあるなら、そこから取り組んでいかないとなかなか治療がすすみません。 思春期のダイエットはとっても危険なんですね。家に帰って、娘とじっくり話し合います。そのうえで一緒にまいりますので、よろしくおねがいします。 |
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Fさんの診察室 最近、月経の周期がなんだか短くなってきたみたいで、1月に2回は来るようになってきました。生理痛も以前より楽になったし、量もなんだか減ったみたい。でも、今回の月経は始まったと思ったら、少量で2週間以上続いています。 Gさんの年齢は44歳ですね。そろそろ閉経の準備をする更年期というライフステージに入ろうとしています。そのため、排卵のない周期が増えてきます。月経の周期が短くなってきて、量や出方が変わってきているのだろ予想できます。 じゃあ 自然なことだから治療の必要は無いのですね。 そうですね。でも、出血が長く続いたり、頻繁に出血するときには、子宮の内膜自身の細胞の異常が原因であることがあるので、念のため、超音波や子宮癌の検査を受けたほうが良いと思います。一度内診させてもらっても良いですか? 今年も先生に子宮頸癌の検査をしていただいて、問題はなかったといってくださいましたよね。 そのとおりです。ただ、子宮にはもうひとつの癌があるのです。年齢的に、子宮内膜のがん(子宮体がん)検診をお勧めします。子宮の状態も超音波で確認させてくださいね。 内診後 どうでしたか? 出血していますね。超音波で子宮の内膜が分厚つかったので、子宮内膜の細胞を検査させていただきました。出血は止めましょうね。 子宮の内膜癌の検査は毎年受けたほうが良いのですか。 変な出血あるときにするだけで、毎年検診としてする必要はありません。がん検診の結果を待ちましょう。 |
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